シングルマザー・貧困家庭でも夢をあきらめないで!医学部進学に役立つお金のこと。受けられる支援制度やサービスについても
- 2021/6/19
- スキルアップ時間


子どもが成長していく過程で、「将来どんな職業に就きたいか」という課題にあたる時が出てきます。小さい子が持つ将来の夢といえば戦隊ヒーロー、アイドル、ユーチューバーなども多いですが、中には医師、警察官、消防士などに興味を持つお子さんも同じくらいいます。
子どもの夢の話だし…また、医学部進学なんてシングルマザーの私には逆立ちしても無理な話だろう、と感じてしまうこともあるかと思います。
たしかに、『医師』という職業はお金持ちというイメージが強く、事実、医師を目指す医学生の中には親が医師など、比較的裕福な家庭の子どもが多いのも事実。やっぱり、医学部の学費が高いからそうなのではないか?と感じてしまうと思いますが、結論から言うと、シングルマザーや経済状況に不安があるご家庭のお子さんも医師を目指すことは可能なんです!今回は、例えどんな経済状況であっても医学部進学できるお金に関するいろいろな情報をまとめてみました。

医学部進学に必要な学費、年間で300万円以上!?
「医学部に入るために山を売った」、「ほかのきょうだいがみんなで働いて医学部に通うための学費を稼いだ」というセリフや状況などを、テレビドラマや漫画などで見かけたことがあるかと思います。経済状況に不安があるご家庭のお子さんが医学部進学をすることは、それぐらいお金のことで無理や苦労をするというイメージがついていますが、実際のところはどうなのでしょうか。
たしかに、医学部の学費は、大学の文系学部はもちろん、理工学部や農学部に比べてもお高めです。教室で授業を受けることが多い文系学部とは違い、医学部は高額な医療機器を使った授業や実習もありますし、教員に対する学生の割合も少ないために教育にかかる経費が違ってきます。
しかし、卒業までに2,000万円以上かかるのは当たり前というのは、事実ではないようです。この数千万円という高額な学費は私立大学に進学した場合。国公立大学医学部の学費は、ほとんどの大学が年間60万円以下で高くても60万円台です。たしかに文系学部などと比べると高いなと感じるところではありますが、卒業するまででも合計400万円以下がほとんどで、シングルマザーや経済状況に不安があるご家庭でも奨学金や教育ローンで十分賄える金額です。
学費を払うために山を売った、などという話は、きっと私立大学の医学部に進学した場合です。それでも将来は医師として働くことになるのですから、余裕で返済が可能という金額ではないでしょうか。そうです、医師になれば奨学金はちゃんと返せるだけの収入はありますので、医師になる夢を早々にあきらめてしまう必要はないのです。

医学部は6年制!
医学部はほかの学部とは違い、6年制の学部であることも学費が高くなる理由になっています。ただでさえお高い医学部の学費を、ほかの学部に通うより2年も多く支払う必要があるのです。学費の支払いプラス、社会に出るのが遅くなりますから、お給料をいただくまでに時間がかかるというのも、経済状況に不安があるご家庭には苦しい条件になります。
6年制の学部は医学部のほか、歯学部、獣医学部、薬学部が挙げられます。独自で建築学部は6年制にしている大学もありますし、司法試験のために法学部+法科大学院と進む子どもも多いです。病院の精神科などで活躍する臨床心理士になる試験を受けるにも、専門の認定大学院を卒業する必要があります。国家資格を必要とし、さらに専門的な知識が必要な職業を目指す学部は6年制ということは仕方がないことかもしれません。
国公立大学を選ぶメリット
さきほど述べましたが、国公立大学医学部の学費は、私立大学医学部の学費の6~7分の1程度です。そのほかにも国公立大学医学部に進学するメリットはたくさんあります。
地域にもよりますが、地元の国公立大学に進学する場合は入学金が半額程度になります。例えば、横浜市立大学医学部なら横浜市在住、京都府立医科大学なら京都府在住の子供は半額程度になる、といった具合です。そのほか、地元在住の学生は諸費用が割引になる大学もあります。
また、国公立は費用が安いから授業の質が低い、私立大学は学費が高いから授業が分かりやすいというわけではありません。授業内容はどちらも同じ。でも、医師の国家資格試験合格率に関しては、トップクラスの順位は学費の安い国公立大学が割合のほとんどを占めています。それだけ、国公立大学の進学者は優秀者ぞろいです。
その理由としては、費用がかからないメリットを受けたいのは誰でも同じなため、親が医師や実業家など裕福なご家庭の子どもも、そうではない経済状況に不安があるご家庭も、全員が国公立大学を受験するからです。よって、国公立大学入試を突破できるのは医師を志す子どもの中でも成績上位者ということになります。
偏差値を見ると、国公立大学医学部の偏差値(ボーダーライン)は、62~67.5位が多いようです。最難関の東京大学、京都大学などは72以上がボーダーのようです。私立大学も同じくらいで、偏差値は60~70がボーダーラインというデータがあります。どちらも決して簡単ではありませんので、お金の心配も大事ですが、勉強をして成績を上げることもしっかりしておきましょう。

医学部受験特有!「地元枠入試」「地域枠奨学金」のメリットについて
各都道府県に国立、県立、市立、いずれかに医学部が設置されています。
特に地元の大学、自宅から通える大学に進学できればさらに学費や費用を抑えることもできるので、シングルマザーや低所得層の医学部志望者は、地元の大学に進学を目指すのが良いでしょう。
近年、特に地方では医師不足が問題となっており、地域医療を支えるという目的として「地域枠入試制度」が設けられています。ほとんどの国公立大学、私立大学が実施しており、地元出身学生を優遇して入学をさせることによって地元の医師不足解消に繋げるという取り組みです。入試は一般入試と異なり、一般より難しいということはないことがメリットとして挙げられます。逆に、地元ではない大学を受験する場合は不利ともいえるかもしれません。
地域枠の「奨学金制度」のメリットに関しては、代表的なのは医師免許の取得後、地元の病院で医師として勤務するなどの条件を満たすことで、奨学金の返済が免除になるなどの助成を受けられることです。地域によって条件が多少異なってきますので、地元の制度を一度チェックしてみてください。

学費が免除になる大学もある
さきほどの地域枠による返還不要の奨学金に似ていますが、一定の条件を満たした場合に、学費免除や奨学金返還不要になる大学があります。
自治医科大学
医師免許の取得後に出身都道府県の公立病院(指定のへき地病院含む)に9年間勤務することで、入学金や学費が免除(0円)になる制度を利用できるのが、栃木県の自治医科大学です。私立大学なので本来なら6年間で2,300万円ほどの費用がかかるのですが、大学卒業後に地元で医療貢献したいと考えているなら、こちらの大学受験を検討してみてください。
防衛医科大学校(防衛医大)
防衛医大というのは普通の大学ではなく、防衛医大の学生になった時点で防衛省の職員となるため、学生は入学金や授業料を支払うことがありません。それどころか、学校の制服、食事、医療費も防衛省持ちですし、職員ということで学生手当が月々、期末手当が年2回出ます。防衛省共済組合の福利厚生もあります。
手厚い待遇を受けられるにはそれなりの条件を満たすことは必要です。卒業後は幹部自衛官として、総合臨床医を目指しながら実務研修を受けることになります。研修終了後は部隊などで2年間勤務、その後もさらに専門分野を学ぶために2年~4年程度研修期間を過ごします。防衛医大卒業後、最低9年間防衛省に勤務することが定められていますが、自衛隊、部隊に興味がある人にはおすすめです。
産業医科大学
こちらも私立大学で普通なら6年間の費用が3,000万円を超えて大変高額ですが、医師免許取得後に産業医や産業医科大教員、労災病院での勤務をした場合に、修学資金貸与制度が適用となります。6年間貸与を受けた場合は9年間の勤務で、学費が約1,900万円も安くなります。全額免除ではありませんが、約3,000万円が約1,100万円になるわけですから、これはかなりの違いです。しかし、適用条件に外れる進路を取ると修学資金貸与制度は使えなくなりますので、受験する際に進路や進みたい方向性を慎重に考えて決める必要があります。
そのほか、修学資金制度の貸与を受けた学生が医師免許取得後、指定の病院に9年~12年ほど勤務することで奨学金が返済免除になる制度がある国公立大学も多数あります。特に地方の医師不足の地域ではそういう制度が利用できることが多いので、ぜひチェックしてみてください。
学費が高くても私立大学医学部に進みたい場合
偏差値の問題もありますが、学校の特色に魅力を感じるなどで私立大学医学部を希望する子もいるかと思います。
6年間で2,000万円~3,000万円、年間で400万円程度の費用がかかる私立大学医学部にシングルマザーや経済状況に不安があるご家庭のお子さんが通うとなると、自己負担で費用をまかなうことは大変困難なことです。大体、年収よりも年間費用が高い家庭がほとんどです。こちらは奨学金や銀行などの教育ローンで借り入れる方法を考えましょう。
自治体などが運営する奨学金で、シングルマザーや非課税世帯は返還不要の奨学金があるのをご存じでしょうか。高等学校の成績次第で給付が決まる規定などもありますが、こちらはぜひとも押さえておきたい制度です。さらに、国が運営している日本学生支援機構という機関では、月々6万円程度が無利子で、また、有利子で12万円までの奨学金もあります。
教育ローンは奨学金よりも金利が高めではありますが、適用条件などのハードルが低くて審査も早いため、早期に借り入れが可能というメリットがあります。後々ローンを返済するにしてもいずれは医師として高収入が見込めるのですから、必要な学費や生活費などは思い切って利用を検討しましょう。
成績優秀者に対しての学費減免を行っている私立大学医学部もあります。入試、入学後の成績によって特待生として対象になれる場合もありますので、成績に自信がある場合はこちらも視野に入れておくと良いでしょう。

まとめ
医学部入学前も、医師や富裕層の家庭では、受験前に通う予備校にもお金を惜しんでいませんので、こちらも費用を捻出するのが難しいシングルマザーや経済状況に不安があるご家庭には、ハンデだらけと言っていいかもしれません。
しかし、子どもの夢のため、できることはしてあげたい。それは、富裕層も貧困層も同じ想いを持っています。でも経済状況に不安があるご家庭の方が奨学金や教育ローン返済のリスクが高いため、医学部受験にも相当な覚悟をして挑むはず。親の仕事の跡を継ぐのではなく、自分自身で目指した医師への道を、親としていろいろな手段を利用しながら応援していきましょう。
